夜が明けたら君に幸せを。
もしかして、前の世界でも私が気づいていなかっただけで気にかけてくれる人がいたのかな。


…そうだ。玲音はいつも気にかけてくれていたっけ…。



もっと、周りに頼ればよかった。そうすれば死にたいなんて思わなかったかもしれない。





清水さんとわかれて、近くの階段に汐江くんと座る。



「なんで明日香はこう無茶するかな…」


「…ごめん」



清水さんがくれたハンカチを濡らして、切れた唇の端を汐江くんが優しく拭いてくれた。


今になって叩かれた頬もじんじんと痛んできた。



「汐江くんはさ…」


「朝陽」



むっとしたように言い直してきた汐江くんがおかしくて、ふふっと笑ってしまう。



「朝陽は死にたいって思ったことある…?」


「…え?」



こんなこと急に言ったって困らせるだけだとわかっているのに、止められなかった。
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