夜が明けたら君に幸せを。
「私は何回もあるよ。朝陽たちと出会う前の私は、自分から望んだはずの孤独で押しつぶされそうだった。ずっと苦しかった…。こんな毎日を送るしかないなら、もう死んだ方がマシだってそう思ったの」



あの日、私は死ぬつもりだったのに、気づいたらこの世界に来ていた。



「朝陽たちと出会ってからは、毎日が楽しくて死にたいなんて思ったことは一度もなかった。…だけど、時々考えちゃうの。この幸せはいつまで続くのかなって」



目が覚めたらまたあの地獄の世界に戻っているんじゃないか。


そう何度も考えて朝が来ることが怖かった。



「…死にたいとは思ったことないけど、俺がいなかったらって考えることならたくさんあるよ」


「え…?」


「母親が出ていってから父さんはずっと恋愛とは距離を取っていたけど、三年前に恋人ができたんだ。…でも俺を気遣ってんのか、再婚する気はないからって言ってきて、今もただ付き合っているだけ。別に気にしてないのに。父さんの人生なんだから好きにすればいいのに。そう思ったけど、父さんがそんな風に言うのも全部俺がいるせいだって気づいた。俺さえいなければ父さんはもっと楽になれるのに」



–––––『あんたなんて、産まなきゃよかった』


それはお母さんの本心だったんだろう。


私がいなければ二人は離婚なんてしなかったかもしれない。お母さんが苦しまなくてすんだのかもしれない。



「いなくなりたいと、この世界から消えてしまいたいと何度も思った。…だけど俺には支えてくれる言葉があったから、今まで頑張ってこれたんだ」


「言葉…?」


「昔に一度だけ会った女の子が言ってたんだ。“今日が泣くほど辛かったなら、きっと明日は楽しいよ”って」
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