夜が明けたら君に幸せを。
「いいー?次私たちに逆らったら、この動画ネットにばらまくから」


「はー笑いすぎておなかすいちゃった」


「駅前にできたカフェ行こー!」



満足したように三人が出て行ってからも、しばらく呆然とその場に寝転がったまま動けなかった。





どうやって、家まで帰ったのか自分でもよく覚えていない。


落ちていたハサミで縄を切り、破れた体操着からまだ濡れている制服に着替えて、気がついた時にはもう既に家の目の前まで来ていた。



怒りとか、羞恥心とか、悔しさとか、そんな気持ちはなかった。


全てが、どうでもよかった。



家に入ると、玄関にはヒールが一足脱ぎ捨てられていた。


…またか、と小さくため息を吐きリビングの扉を薄く開ける。


今日は夜勤でいないはずなのに、もう帰ってきているということはまた仕事がクビになったからだ。



思った通り、机にお酒の空き缶を山ほど積み、突っ伏し寝ているお母さんの姿があった。



嫌なことがあるとお母さんはお酒をやけ飲みする癖がある。


それはきっと、あの日から。
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