ツンデレ王子とメンヘラ姫のペット契約

妄想話

ひなこの妄想話は思ったより、好評だった。美織はもちろん、小日向さんは予想以上に笑ってくれ、ひなこは披露するのが楽しくなっていた。

ひなこお得意のキスシーンが迫ると、二人は「おぉ?」と言い、待ってましたと言わんばかりの盛り上がりを見せた。

小日向さんは途中でそれはどういうこと?どうしてそうなるの?と質問もしてくれ、ひなこはその度に、得意げになり、色々話した。

三人の飲み物が無くなった頃、「ラストオーダーです」と店員さんが言うので、三人は店を出ることにした。

「二軒目行きましょ」とひなこが言うので、二人は「いいよ」と言い、小日向さんの提案で最初出会った屋台に行くことになった。

屋台までは三十分くらいの距離だったが、その道中も妄想話は続いた。

美織は流石に疲れ、顔が死んでいたが、小日向さんはまだまだ元気で、時折幼い、無邪気な笑顔を見せてくれていた。

美織のことは忘れ、ただ小日向さんが楽しんでくれてるのが嬉しくてひなこは夢中で話した。

屋台の近くの波丸水産に着くと、今日は屋台は閉まっており、開いてなかった。

しかも、急に大雨が降り出し、みんなが傘を差し出した。しかし、三人は傘を持っておらず、とりあえず近くの軒下で雨宿りをした。

美織は帰ると言い出し、この時ばかりはまじかと美織を殴りたくなったひなこだったが、大方、綺麗なサラサラな髪がゴワつくの嫌なのだろうと察した。言い出したら聞かないのでしょうがなく、解散という流れになろうとしていた。

しかし、ひなこは悪あがきと言わんばかりに小日向さんに「二人で飲みに行きませんか?向こうにお洒落な店があるんですよ」と勇気を振り絞って、誘ってみた。

美織は隣でおぉという顔をしていたが、ひなこは一か八かの賭けであり、緊張していた。

すると、小日向さんはそんなひなこの気持ちもつゆ知らず、「いいですよ」と気軽に言った。ひなこはよっしゃあと心の中でガッツポーズをし、美織に「行ってきます」と満面の笑みを浮かべた。

美織はやれやれという顔をしながら、やがて帰っていった。

小日向さんは近くのコンビニですぐに傘を買ってきてくれ、二人で相合傘をしながら店に向かった。

イケメンと相合傘をしているなんてとひなこは興奮せずにはいられなかったが、小日向さんはスマートにひなこと相合傘されているので、ひなこはとても嬉しかった。そして、この時間が永遠に続けばいいのにと思った。

しばらくすると、目的の店に着いた。

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