ツンデレ王子とメンヘラ姫のペット契約

神奈川旅行

ひなこは友人の優奈と神奈川旅行に来ていた。ひなこは優奈とはTwitterで知り合った友人だ。というのは、ひなこが好きなジャニーズのグループのおれさま男子つながりで出会った。ライブが開催するたびに、二人で協力し合い、なんだかんだ全てのライブに参加している。そこで二人は段々、馬が合うことに気づき、気づくと、ライブ以外のことも話すようになり、旅行にまで行く仲になっていた。

今日は、鎌倉を回ることになっていたので、二人は龍安寺に向かった。そこは今、巷で話題の良縁地蔵というものがあり、人気を博している。どうも、三カ所の三体のお地蔵様を写真に収め、待ち受けにすると、好きな人と結ばれるらしい。

二人は前の彼氏はここの写真の力でできたので、今回もその力を借りようと企んでいた。優奈は以前来たことがあるが、ひなこは来たことがなく、初めてだったのでとても楽しみしていた。良縁祈願の神社はたくさんあるが、お地蔵さんを探す寺はなかなか無いので、凄い商売だなとひなこは思っていた。

二人は電車に乗り現地に着くと、長い坂を上った。ひなこは早々に根を上げ、近くにあったカフェに入りたがったが、優奈は最初の志を忘れることなく、「あんた何しに来たんよ。思い出しなさい」とひなこを諭した。ひなこはそれでも「うえーん」と言っていたが、渋々、坂を上り、ようやく寺に着いたのだった。

寺に着くと、まだ寺は見えず、どうやら寺は山の上にあるらしいとのことだった。ひなこは「うえー、帰りたい」と喚いたが、優奈は早々に拝観料を払い、入場していた。ひなこは「ひどい、待ってよ」と急いで後に続いた。

中は、狭い日本庭園のような構造になっており、思ったより複雑に入り組んでいた。ここから地蔵を三カ所も探すのかと思うと、ひなこは意識が遠のきそうな気持ちであった。

優奈に「一回来たことあるから、場所知ってるよね?」とひなこは優奈に最後の望みを託すが、「昔だから覚えていない」と直ちにその希望はうち捨てられたのだった。

寺内をぐるぐると周り、階段を上っては歩きを繰り返すと、ようやく一カ所目のお地蔵様に会えた。お地蔵様はとてもおだやかな顔をしておいでで、三体が可愛らしく木の根元に並んでいた。二人は群がる観衆の中に入り、「可愛い」としきりに言いながら、先ほどの疲れも忘れ、写真を撮っていた。ある程度すると、優奈が「行こう」と言うので、二人はまた地獄の地蔵探しに戻った。

今日はカンカン照りでなおかつ、とても蒸し暑かった。蝉の声も盛大に響き渡り、夏を演出していた。すれ違う人は、手に飲み物を持ち、これが唯一の救済措置と言わんばかりに飲んでいた。ひなこは暑くて、何度も「もういいじゃん」と優奈に訴えたが、優奈はそれを聞かずどんどん進むので、しょうがなくついて行くしかなかった。

また、階段を上り、景色の良いところで時々写真を撮り、ようやく、二カ所目の地蔵に辿り着いたのであった。二カ所目は先ほどの地蔵と違い、三体の位置が違った。たいしたことではないが、さっきの配置の方が良かったなとひなこは思った。

そしていよいよ最後の地蔵を探しに行くが、これが大変で、どこを回っても全く見つからなかった。一体どうしたものかと途方に暮れたが、ここまできたらひなこも引き下がるに引き下がれないので、暑さときつさに耐え、どうにか歩き続けた。

しかし、やはり見つからないので、ひなこは近くにいた清掃しているおばさんに場所を聞いた。すると、すぐに場所が分かったので、最初から聞けば良かったと思ったが、優奈がそれだと御利益がないと言うので、大分時間が経ってしまっていた。

最後のお地蔵様の前には誰もいなかった。どうりで分からないはずだとひなこは思った。二カ所と同じように写真を撮り、いよいよ三枚の写真をコラージュして、待ち受けにし、さらにインスタに載せた。そして、小日向さんのトーク画面もお地蔵様に変えた。

ついでに、小日向さんにその写真を送り、「仕事でお疲れの独身貴族の小日向さんにこれあげます」「良いことありますよ」とコメントを書いた。しばらくすると、返信が来て、「あざます」「もはやこの写真怖いよ」と書いてあったので、「え、どこが怖い?」「可愛いおじさんやん」と送ると、「うん」「可愛い」と来て、珍しく絵文字がついていた。

ひなこは「でしょ?」「良縁地蔵、きっと良い人見つかりますよ」とさらに送ると、「あざす」としか来なかった。

これにひなこはめげずに、「あざすで終わらせようとしてますね」と言い、「そんな小日向さんにはこれで懲らしめます」と送ると、すぐに「は?」と返信が来たので、すかさずこの前撮った小日向さんの写真を伝家の宝刀とばかりに「めちゃかっこいい」「横顔のお写真」「きゃーーー」という言葉とともに送った。

するとまた、「は?」という返信が来たので、追い打ちとばかりに、また写真を載せ、「こっちもありますよ」「可愛いですね」と送ると、小日向さんから呆れたように「加工しすぎ」と返信が来た。ひなこは「いやこれ加工なしですよ」と言うと、自分の面と向かってみるときもいわ」と言った。

ひなこは「なんでよ」と送ると、さらに「こんなにかっこいいのに」「自慢しがいがあります」とも送った。小日向さんは「意味不明」「笑」と来ていたが。まんざらでもなさそうである。ひなこは「いいやん」「私はずっとここ最近眺めてました」と送ると、「やめとけよ」「笑」と来たので、「いやだ」「なんなら夢に出てきました」と送り、さらに「どんなシチュエーションだと思いますか?」と良からぬことを聞くと、案の定「知らんがな」「笑」と来たので、「えー言ってくださいよ」「盛り上がるじゃないですか」と調子にのって送ると、「盛り上がらんよ」と来た。

ひなこは今度は可愛こぶって「ぶーぶー」「強いて言うなら?」と送ると、「うん」「ほんと寝て」といつもの小日向さんの台詞が炸裂した。ひなこは「冷たいなぁ」と送り、「ネタバレ」「私が小日向さんが飼っているマルチーズになっていました」「お座りとお手をさせられました」「ひどいです」と付け加えた。

小日向さんはやはり「は?」「笑」と来て、「もっかい言わせて?知らんがな」と来たのだった。

ひなこはLINEが終わってもしばらく一通りの流れを見て、ニヤニヤしていた。すると隣にいた優奈に「顔キモいよ」と言われ、へこんだのであった。
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