狂った雷

杏は八咫烏を見て、胸を弾ませていた。ついに時が来たのだ。自分をずっと縛っていた鎖が全て解けたような、深い暗闇に光が差し込んだような、そんな感覚を杏は覚える。すると、頭の中に声が入り込んできた。

『ヤクサから伝言だ。例の作戦を決行する』

『嬉しい……！ありがとうございます……！』

杏はその場で小さく飛び跳ね、心の中で何度も感謝の言葉を述べる。八咫烏はペコリと頭を下げた後、飛び去って行った。それを杏は見届けた後、何事もなかったかのように両親の元へと戻る。

あの日、ヤクサが提案してくれたのは、婚約者とその浮気相手を怖がらせ、徹底的に懲らしめてやろうというものだった。ヤクサはすぐに他の神々を呼び集め、作戦会議を行い、ずっと機会を伺っていたのだ。

杏と両親が昼食を食べていると、外は雲一つない晴天だと言うのに、どこからか雷鳴のような大きな音が聞こえてくる。

「何だこの音は？雷か？」

「変ですねぇ……。外はこんなに晴れているのに……」