狂った雷
両親が顔を見合わせ、杏も二人に合わせて首を傾げて不思議がる様子を見せる。雷鳴の音はどんどん大きくなっていき、次の瞬間、部屋の襖が勢いよく開いた。

「何ですの、あの部屋は!!どうして部屋の中だというのに雷が轟いて、大雨が降ってくるんですの!?」

「そんなこと、僕に聞かれても知るわけないだろ!!」

襖が開いて倒れ込むように入って来たのは、何と杏の婚約者の男性とあの日一緒に歩いていた女性だった。二人とも半裸状態で、何をしようとしていたのかは嫌でも察することができてしまう。

ヤクサの力で、二人が共に過ごしていた部屋に大雨を降らせたようだ。二人とも全身ずぶ濡れで、突然のことに戸惑って口論している。

「んんッ!!」

父がわざとらしく大きく咳払いをすると、二人の口論はピタリと止んだ。女性は誰の家何だと言いたげな顔で部屋を見回し、婚約者は顔を真っ青にしている。そんな二人に対し、顔を真っ赤にした父と混乱した様子の母が「どういうことか」と問い詰め始めた。
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