狂った雷
(いい気味……)

両親に詰め寄られて婚約者は女性がしつこく言い寄って来たなどと言い、それが女性の怒りにさらに火をつけて部屋は一瞬にして修羅場と化す。その様子を杏は無表情で見つめた後、口論している四人を置いて家を出た。



家を出た杏が真っ先に向かったのは、あの神社だ。そこにはヤクサが木を見上げながら立っており、杏は笑みを浮かべて駆け寄る。

「ヤクサ様、ありがとうございました!」

「その様子だと、復讐はうまくいったようだな」

ヤクサも杏に微笑みかけ、杏に近付いてくる。そして、彼の大きな手が杏の頭に触れた。あの日のようにゴツゴツした手が頭を撫でていく。

「よく頑張った」

「私は何もしてません。ヤクサ様や他の神様たちが復讐を全てしてくれたじゃありませんか」

頭を撫でてもらいながら杏は笑う。もうあの日のように泣いたりはしない。今は清々しい気持ちでいっぱいなのだ。

「ところで杏、その着物はあの男から贈られたものなのか?」
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