君が好きなだけ。
「なぁ、もう1回さやり直したい」
「……」
「彩海がまだ、俺のこと好きでいてくれてるんなら」
「……好きじゃないよ」
私は、……好きじゃない。
「燈馬のことは、もう好きじゃない」
私には、隆がいるから、。
「……好きな人、他にいんの?」
「………」
いるよ、って言いたい。でも……、見たことのないほど顔をゆがめてる燈馬を見たら、言うのが躊躇われた。
「彩海、来たよ」
香純さんに声をかけられて、扉の方を見ると、隆がいた。
「……彩海、この人は?」
「……中学のとき同じ塾だった人で、元彼」
「そっか、はじめまして彩海の彼氏の岩城です」
え、って動揺する燈馬。……ごめんね、。
「じゃあね、」
燈馬との関係が戻ることは、もう一生ないよ。
私には、隆がいるから。
「前に言ってた人だよね?あの人」
「……うん、」
隆に告白された時に伝えたこと。
今燈馬のことは忘れられてない。その状態で付き合ってもいいのか、ってこと。
隆は、いいよって……、必ず俺だけを好きにさせるからって言ってくれた。
「今は、あの時と気持ち変わってない?」
「……ううん。今は隆だけだよ」
優しく抱きしめられると、嫌なことも全部吹き飛ぶこの温もりから離れたくなくなる。
「もうさ、彩海の過去とかどうだっていいって思ってたけど、やっぱ嫉妬はするね」
「そうなの?」
「うん。受験で白雪選んだのが、あいつのおかげだってわかってたから少しだけ感謝してたけど、やっぱ俺の知らない頃の彩海を知ってたんだと思うと複雑」
「そっか〜」
「ま、今は俺のだからいいけど」
「そーだよー、今は岩城隆の内海彩海でーす」
こんなふにゃけた空気が、飾らない空気が心地いい。だから、このままでいたい。
「彩海好きだよ」
「私も大好き!」
言葉を交わせて、メールもちゃんとしてくれる。頻繁に会える。
私は面倒くさい性格だから、こういう豆な、真面目な人が合うんだと思うんだ。
だから___燈馬とは、合わなかったんだと思う。