3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 出会いの場は多くあるはずなのに、仕事一筋の高清水先生に浮いた話は一度もなく、彼女はいないと噂で聞いたことがあった。
 それなのに三年間だけ結婚してくれる相手を探していたなんて……。

 呆然となり言葉が出ずにいると、高清水先生は深いため息を漏らした。

「いくら必要なんだ?」

「えっ?」

 主語のない言葉にポカンとなる中、彼はチラッと私を見る。

「さっきのネタで俺を脅すつもりだったんじゃないのか?」

「脅すって……! そんなわけないじゃないですか!」

 すぐに反論したものの、彼は信じられないようで疑いの目を向けた。

「じゃあなぜ声をかけてきた?」

「それはっ……」

「それは?」

 すかさず聞かれ、返答に困ってしまう。

 どうしよう、正直に話す? だけど相手は高清水先生だよ? いくら契約結婚とはいえ不釣り合いすぎる。
 そもそも私では彼のほうからお断りされるのでは?

 グルグルと考えていると、高清水先生は片眉を上げた。

「脅すつもりではなかったのなら、振られた俺を嘲笑いにきたのか?」

「まさかっ……!」

 一介の事務員でしかない私には、そんな度胸など持ち合わせていない。しかし彼の疑いは晴れないようで自傷気味に笑う。
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