3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「ののちゃんの成長を楽しみにしていたのも、幸せを願っていたのも両親だったわ。だからね、私はなにがあってもののちゃんが結婚するまではふたりのもとへいけないって思ったの。私にはふたりに代わってののちゃんの幸せを見届ける義務があるから、頑張って長生きしなくちゃって」

 両親が他界した後もこうして私が幸せな人生を歩んでこられたのは、祖母のおかげだ。祖母がいなかったら、今の私はいないと思う。

「これからも長生きしてもらわなくちゃ困るよ? だってこれまで育ててもらった分、孝行させてもらわなくちゃいけないんだから」

「そうですよ、俺にも野々花と一緒に孝行をさせてください」

 すかさず言ってくれた彼の言葉が嬉しくて、ますます目頭が熱くなる。

「ありがとう。……実はね、ふたりに頼みたいことがあるの」

 改まって言う祖母に、私と理人さんは顔を見合わせる。

「なに? 頼みたいことって」

「俺たちで力になれることがあったら、遠慮なく言ってください」

 すると祖母は立ち上がり、タンスの中から一通の封筒を持って戻ってきた。

「近々、この家を売って施設に入ろうと考えているの」

「施設って……」

 想像もしていなかった話に言葉が続かない。
< 105 / 255 >

この作品をシェア

pagetop