3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 そうだったんだ。……すごいな、理人さんは。ちゃんと祖父のことを考えて行動している。それに比べて私はなにやっていたんだろう。

 もちろんひとりで暮らす祖母を心配していた。でも心配していただけで、今後の祖母の生活を真剣に考えたことがなかった自分が恥ずかしい。

「一度、一緒に施設の見学に行ってくれないかしら。ののちゃんと理人君にも実際に見てもらって意見を聞きたいの」

「もちろんです。毎日生活するんですから、慎重に決めましょう」

「ありがとう、理人君。……ののちゃんもお願いね」

 私の様子を窺う祖母に我に返り、慌てて笑顔を取り繕った。

「うん、わかったよ」

 私の話を聞き、ホッとした顔を見せた祖母はその後も理人さんに施設について相談していたけれど、私は話に入っていけず、ただ聞くことしかできなかった。


 自宅に着いたのは十六時過ぎだった。お土産にもらったたくさんの料理を詰め直して、冷蔵庫や冷凍庫にしまっている間も、頭の中は祖母のことでいっぱいだった。
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