3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「色々と祖母の相談に乗ってくださり、ありがとうございました。……私はなにもわからなかったので助かりました。祖母も心強く感じたはずです」

 笑顔で話していたのに、次第に表情が強張っていくのを感じて慌てて顔を伏せた。

「本当にありがとうございました」

 やだな、どうして泣きそうになるの? 祖母が施設に入ることを考えていることに気づけず、無知な自分が悪いんじゃない。
 それなのに、相談してくれなかったことが悲しくて、祖母にとって私は頼りにならない存在なのかもしれないと思うとつらいなんて……。

 気を抜いたら涙が零れそうで、必死にこらえる。

理人さんがカップをテーブルに置く音が聞こえたかと思ったら、私が手にしていたカップを奪われた。

「えっ?」

 咄嗟にそのカップを目で追う。彼は私の分もテーブルに置いたら、私の肩に腕を回してそっと抱き寄せた。
 すぐに鼻を掠める爽やかなマリンブルーのコロンの香りに心臓が飛び跳ねた。

「え……え? 理人さん?」

 突然のことにパニックになり、出そうになっていた涙も引っ込んだ。

 どうしたの? 急に。なぜ理人さんは私を抱き寄せたわけ? もしかして新手の嫌がらせとか?

 困惑する中、理人さんは優しい手つきで私の頭を撫でた。
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