3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「笑いたければ笑えばいい。現にどんなに努力したところで、親の七光りで医者になれただけだと言う人間も少なくない。常に俺の失脚を狙っている輩もいるくらいだ。そういうやつらが今この場にいたら、これ見よがしに笑うだろうな」

 耳を疑う話に言葉が出てこない。だってそんな話、噂でも聞いたことがなかったから。しかし事務員の私にはドクター間の立場や上下関係はもちろん、病院の運営側の事情など知る由もないのは当然だ。でも……。

「患者さんはそんなこと、絶対に誰も思っていませんよ」

「えっ?」

 さっきの彼の言葉が引っかかり、言葉が口をついて出てしまった。一瞬、なにを生意気なことを言おうとしていたのだろうと後悔したものの、事務員だからこそ聞けた患者の声を思い出し、伝えたい思いが大きくなっていく。

「私は医療事務員なので、退院していく患者さんと触れる機会が多いんです。……よく高清水先生のおかげで命を救われた、感謝しているって声を聞きます。皆さん、本当に嬉しそうに退院していくんです」

 だから一度も話したことがない高清水先生が、誰からも好かれている理由がわかった。彼に命を救われた患者は口を揃えて「高清水先生に出会えてよかった」と言う。
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