3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「無理するなよ」

 苦しそうに言われた一言に耳を疑う。

「もし俺が野々花の立場だったら、どうして相談してくれなかった?と落ち込むと思う。……野々花だってそうだろ? 大切な人に頼ってもらえないことほど、つらいことはない」

「理人さん……」

 彼は私の髪を撫でながら続ける。

「必要があれば、協力し合おうと約束しただろ? 今がまさにその時だ。 つらい時が悩む時があったら俺を頼ってくれていいし、弱音を吐いてくれてもいい。だから無理して笑うのはやめろ」

 どうして理人さんはこんなにも優しいんだろう。ただの契約上の関係で、三年後には離婚するのに……。
 なぜわかってくれたの? 祖母に頼りにされなかったことがつらくて悲しいってことも、私がほしい言葉も全部。

「あんまりですよ、理人さん。……泣かないつもりだったのに、そんなこと言われちゃったら我慢できる自信がありません」

「だったら我慢しなくていい。俺しかいないんだから、思いっきり泣いたらどうだ? すっきりするぞ」

 クスクスと笑いながらも、ポンポンと私の頭を撫でる彼の手は優しくて涙が溢れた。

 それに気づいた理人さんは、テーブルの上にあるティッシュボックスを私に差し出す。

「使う?」

「……はい」
< 110 / 255 >

この作品をシェア

pagetop