3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 数枚手に取り、涙を拭って流れそうになる鼻水を噛むと理人さんは「ふふ」と笑う。

「豪快だな」

「私を泣かせた理人さんのせいです」

「それは悪かった」

 抱き寄せられた時はドキドキして戸惑っていたのに、今は彼のぬくもりを感じて落ち着く自分がいる。心地よくてずっとこのまま甘えていたいと思うほどに。

「おばあ様はきっと、野々花のことを考えて施設に入ることを決めたと俺は思う。相談しなかったのも野々花の気持ちを思ってだろう」

「そう、かもしれませんね」

 優しい祖母なら、私の結婚が決まったら生活の邪魔をしないように施設に入ろうと考えるかもしれない。

「おばあ様が幸せに暮らせるところを一緒に探してあげよう。それで頻繁に顔を見せに行こう。サービス付き高齢者向け住宅なら外出も自由だ。旅行に連れていってもいい。そういった孝行の仕方があってもいいんじゃないか?」
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