3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 遊園地の公式アプリで待ち時間を確認してくれた彼が指さしたのは、高い地点から下ったり、一回転したりする最恐と有名なジェットコースター。

「これが一時間待たずに乗れるって滅多にないらしいぞ。行こうか」

 どうやら理人さんは絶叫アトラクションが好きなようで、心なしか浮足立っている気がする。そんな彼に実は苦手なんですとは言えない雰囲気だ。

「はい、そうですね」

 バレないように笑顔で言うと、理人さんは私の手を握った。

「早く行こう」

「えっ? あっ」

 よほど楽しみなのか、理人さんは私の手を引いて走り出した。

 理人さんってば、待ちきれなくて走っちゃうほど好きなの?
 まるで子供のような意外な一面に、恐怖心が薄れていく。彼と一緒なら克服できるかもしれない。

 アトラクションの最後尾に並び、動いているアトラクションを見るたびに楽しそうな理人さんに必死に笑いをこらえる。
 そしていざ乗ってみたものの……やはり人はそう簡単に苦手なものを克服などできないようだ。


「大丈夫か? 野々花」

「すみません」

 ベンチでぐったりする中、理人さんは心配そうに買ってきてくれた炭酸飲料を私に差し出した。
 それを受け取ると、理人さんも隣に座る。
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