3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「遠慮しなくてもいいのに」

「していませんよ。それに置き場所はどうするんですか?」

「部屋は広いし、どこに置いてもいいさ」

 違いますよ、理人さん。離婚後、買ったぬいぐるみをどうするかのかが聞きたかったんです。

 私が住むとなれば、今のマンションほど大きな部屋は借りられそうにないから、置いていかなくてはいけなくなるだろう、理人さんはぬいぐるみなんて好きじゃないでしょ? そうなるとやはり買ってくれたとしても捨ててしまうのだろうか。

 そう思うと切なくて、胸がギュッと締めつけられる。

「欲しくなったらいつでも言ってくれ」

「安心してください。そんな日はきませんから」

 理人さんにはかたちに残るものはもらいたくない。離婚してからそれを見て彼との楽しかった日々を思い出してしまいそうだから。

 ぬいぐるみを持つ手に力が強まった時、前方のほうでなにやら人だかりができていた。

「なにかあったんでしょうか?」

「気になるな。ちょっと見てくる」

 そう言って駆け出した理人さんの後を私も追う。
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