３年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
　先に人込みをかき分けて取り囲まれている人物のところに着いた理人さんは、大きな声で「大丈夫ですか？　私の声が聞こえたら手を握ってください」と言った。

　誰か倒れていたんだ。

　よりいっそう人が増え、大きなぬいぐるみを持った私はなかなか理人さんにまでたどり着けない。緊迫する中、再び彼が声をあげた。

「すみません、どなたか救急車を呼んでください」

　どうすることもできずに立ち尽くしていた人たちに向かって理人さんが言うと、ひとりの男性が「すぐに呼びます」と手を挙げ、電話をかけ始めた。
　どうにか人と人の隙間から状況を窺うと、横たわっている男性はぐったりとしていて、意識がない。

「近くにＡＥＤがあるはずなので、急いで持ってきてください」

　理人さんの指示に従い、みんな協力していく。

　届いたＡＥＤを操作して、延命処置をする姿に息を呑む。理人さんはいつもこうやって誰かの命を救っているんだ。

　改めて彼がドクターなのだと認識する中、倒れていた男性に反応が見られた。
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