3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「よかった、ひとまず大丈夫だ」

 理人さんもホッとしたところで、救急車のサイレンが聞こえてきた。すると近くにいた男性が「誘導してきます」と率先して動く。

 彼が来るまで傍観していたみんなが、ひとつの命を救おうと動く姿に胸を打たれる。救急隊が来るとすぐにみんな道を開け、男性は担架に乗せられた。
 救急隊に説明をする理人さんを見て、近くにいた女性たちが話し出した。

「カッコよかったね、的確に指示を出す姿とか最高だった」

「それにイケメンだし、自分が病気や怪我をしたらあの先生に診てもらいたい」

「私も」

 きっとここにいる誰もが同じことを思っているはず。本当に救命する理人さんはカッコ良よかった。
救急隊と話を終えた彼は周囲を見回す。そして私と目が合うと駆け寄ってきた。

「ごめん、野々花。治療に関わった以上最後まで責任を持ちたいから、うちの病院に搬送してもらうことにしたんだ」

 そこまで言われたら次に彼がなにを言うのかがわかる。

「はい、それがいいと思います。私なら大丈夫ですから行ってください。あ、このぬいぐるみは責任を持っておじい様に届けてきます」

 私のことは気にしないでほしくて明るく言うと、理人さんは眉尻を下げた。
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