3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 いくら本心とはいえ、あまりに上から目線だったのでは? 何様だよとか、事務員のお前になにがわかるって怒られる?
 すぐに謝ろうとした時、高清水先生は少しだけ頬を緩めた。

「事務員のキミでしか聞けない患者の声を話してくれてありがとう。……救えない命もある現場にいる中で、救えた患者の声を聞けて嬉しいよ」

「い……いいえ、そんな」

 びっくりした。いつも遠目に見ていた高清水先生は厳しい顔をしていたから、初めて柔らかい表情を見てまだ心臓が驚いている。

 それにしてもちょっと表情を崩しただけでこんなにも人の目を惹きつけるくらいだ、彼が笑ったらどうなるのだろうか。
 想像したら心臓が壊れそうで、慌てて妄想を止める。

「しかし、そうなるとますますなぜキミが俺に声をかけてきたのか気になるな。それに見たところ、俺だと気づいていなかっただろ?」

 話を戻されて、「あっ……」と声が漏れたが続かない。
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