3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 訪ねてくるくらいだもの、理人さんの親族の可能性もある。結婚式の時は緊張していて挨拶を交わしたけれど、親族はうろ覚えだった。

 もしかしたら私が忘れている可能性もある。とにかく声をかけてみよう。そう思い、彼女のもとへ歩み寄る。
 それに気づいた彼女は顔を上げ、私の様子を窺いながら立ち上がった。

「野々花さんでしょうか?」

 あれ? 結婚式で顔合わせた親族ではない?

「はい、そうです」

 戸惑いながらも返事をすると、彼女はにっこり微笑んだ。

「初めまして、渡部天音と申します。ずっとアメリカで臨床研修留学をしていたから、理人の幼なじみとして結婚式に参列できなくてごめんなさい」

 理人さんの幼なじみって……あっ! 彼のご両親が言っていたあの幼なじみのことだよね?

「初めまして。ご挨拶が遅れてしまい、すみません」

 すぐに頭を下げた私に対し、彼女は「気にしないで」と声をかけてくれた。顔を上げて彼女を見る。

 身長は一七〇センチ近くあり、スラッとした体型にショートカットがとてもよく似合っている。少し釣り目の瞳がきつい印象を受けるが、笑った顔は綺麗で同性でもときめくほど。まさに仕事がデキる理想の女性像だ。
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