3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 もしかしたら理人さんは渡部さんと特別な関係なのかもしれないんだよね。だって彼のご両親が言っていたもの。

 幼なじみで同じ医者で、ふたりが並ぶとお似合いだろう。祖父のために結婚したくてもできなかったのは渡部さんが留学していたとなると、すべて納得がいく。

「どうしても野々花さんに会いたくて、おじさまとおばさまにここの住所を聞いて来ちゃったんです」

「私にですか?」

「えぇ」

 私に会いに来た理由はひとつしか浮かばない。理人さんと別れてほしいという話だよね?

 理人さんとは三年後に離婚することを前提に契約した関係だ。本命が戻ってきたなら、私との関係を続ける必要はなくなる。
 それに彼女は理人さんのご両親も気に入っているようだし、心から愛する人と幸せになってほしいと願っている彼の祖父の願いを叶えてあげられる。

 理人さんが望むなら離婚するべきだ。そう頭ではわかっているのに、心がそれを拒否する。
 言葉が続かずにいると渡部さんはチラッと持っている袋を見た。
< 132 / 255 >

この作品をシェア

pagetop