3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「もしかして野々花さん、自炊されているんですか?」

「あ、はい」

 すると渡部さんは目を見開く。

「じゃあ理人も野々花さんが作った料理を食べているんですか?」

「そう、ですけど……」

 なにか変なことでもある? 夫婦なら当たり前のことじゃないだろうか。
 思わず小首を傾げた私に渡部さんは「ふ~ん」と意味ありげに言う。

「あのことがあってから理人は手料理にいっさい手を出さなくなったのに。やっぱり結婚すると変わるのね」

 あのことってなんだろう。それよりも心なしか嫌味を言われている気がするのは私の勘違いだろうか。

 だけどやっぱり私の思い過ごしではなかったようで、渡部さんは一瞬にして私に敵意を剝き出しにした。

「どうして急に理人があんたみたいな冴えない女と結婚したのか理解できないけど、私が戻ってきたからにはさっさと離婚してもらうから。……理人の隣に立っていいのは、昔から私だけだったの。それはこれからもずっと変わらないわ」

 あまりの豹変ぶりに言葉が出ない。
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