3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 少しの間、幸せな日々を過ごすことだってできた。もし離婚したとしても、祖母にはすぐ言わずに少し時間が経ってから伝えればいい。

 契約違反をしてしまったのなら、早くに報告すべきだ。もしかしたら理人さんも私と結婚している間は浮気しないと約束した手前、渡部さんとの関係で悩んでいるかもしれないし。

 昨日からずっとウジウジ悩んでいたのが嘘みたいに、心が晴れやかになる。

「ありがとう、鈴木君」

「なんだよ、藪から棒に」

 突然お礼を言った私に鈴木君は戸惑っている。

「急に言いたくなったの」

 これからどうなるかわからないけれど、前向きな気持ちになれたのは全部鈴木君のおかげだから。

「感謝しているなら、今度美味い飯でも奢ってくれ。研修医は薄給で生活が苦しいんだ」

「わかった、今度鈴木君が好きな焼肉を奢るね」

「言ったな? 約束だぞ?」

「うん」

 理人さんから渡部さんの話をされて、離婚を切り出されたとしても自分の気持ちはちゃんと伝えよう。そう心に決めて午後の業務に就いた。
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