３年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
　契約結婚を持ちかけて振られたことをネタに、脅しをかけてくる可能性もあると思っていたところ、野々花が意外な提案をしてきた。

　あれほど切望していた契約結婚を彼女からしたいと言われたのだ。それも野々花にとったら理不尽な契約内容なのにもかかわらずだ。

　俺にとっては好都合だけれど、彼女にとっては違うはず。結婚するフリをするわけではなくて、実際に籍を入れてもらうことになるし、さらには離婚することを前提にしたものだ。

　だけど彼女の事情を聞いて自分と似たところがあり、妙な縁を感じた。ロマンチックに言うとすれば、〝運命を感じた〟だろうか。

　だからあの場で野々花と契約結婚することに決めたんだと思う。でもその時の決断を後悔することは今日まで一日もなかった。

　むしろ結婚した相手が野々花でよかった。できるなら三年といわず、ずっと彼女とともに生きていきたいとも思う時もある。
　あれほど女性が嫌いになったというのに、自分でも驚くほどの変化だった。

　手術記録を終え、身体を伸ばすと腹が鳴り笑ってしまう。

　これまでは一日一食でも平気だったのに、野々花がご飯を作ってくれてからというもの、どの料理も美味しくて三食食べないと腹が減るようになってしまった。
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