3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 野々花が作ってくれた弁当の蓋を開けると、今日も俺が好きな紅ショウガの厚焼き玉子をはじめ、鶏肉の葱塩焼きに枝豆を乗せてチーズをカリカリに焼いたものや、金平ごぼう、マカロニサラダが入っていた。

「今日もすごいな」

 手を合わせて金平ごぼうから食べる。しっかりと味が染みていてご飯が進む味付けだ。

「いつ見ても高清水先生のお弁当は美味しそうですね」

 いつの間にきたのか、四十五歳になる部長が俺の弁当箱を覗き込んでいた。

「お疲れ様です」

 びっくりしながらも挨拶をすると、部長はにっこり微笑む。

「料理上手の奥様ですね。内助の功のおかげでしょう、高清水先生の顔色もいい。それに久しぶりにオペしましたがまた一段と腕を上げました」

「ありがとうございます」

 部長はテレビにも取り上げられるほどの脳に関するスペシャリストで、尊敬する医者のひとりでもある。

「なにより周りを頼るようになったのは大きな成長です。もちろんこれまでの何事も最後まで責任を持つ姿勢は素晴らしいことですが、時には誰かを頼ることでチームとしての信頼関係を築くものです。医者だって人間です、時には間違える時もある。それに気づき、助けてくれる仲間が必要です」

「……はい」

 それをここ最近、身をもって知った。
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