３年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「あと少しって言っても、まだ三年近くあるじゃないか」

　期間だってしっかりと契約書で交わしたはず。祖父の延命次第では延長するとも約束したよな？　それなのに、なぜそんな困った顔で言うんだ？

　嫌な予感がして仕方がない。もしかして鈴木と早くに再婚したくなったのか？　俺との契約結婚を後悔している？

　喉元まで出かかっているのに、答えを聞くのが怖くて出ない。すると野々花は俺の様子を窺いながら話しだした。

「そんなにないですよね？　だって渡部さんが戻ってきたんですよ？」

　野々花の口から天音の名前が出て、耳を疑う。

「もしかして天音のことでなにか聞いたのか？」

　たまらず聞いてしまうと、野々花は唇をギュッと噛みしめた。

「……はい、実は昨日渡部さんがマンションまで来たんです。それで理人さんと渡部さんの関係を聞きました」

「関係って……」

　一瞬フリーズするも、すぐに我に返り立ち上がった。

「天音になにかされた？　大丈夫だったか!?」

　さすがにまだ接触していないだろうと高を括っていた自分に苛立つ。天音の執着心については俺が一番わかっていたはずなのに。

　突然立ち上がって大きな声を出した俺に、野々花は戸惑っている。
< 168 / 255 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop