3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「悪い、急に」

 必死に感情を抑えて腰を下ろし、再び野々花と向き合った。

「それで天音はなぜ野々花に会いにきたんだ?」

「それは……」

 途端に口籠った彼女を見て、昔のように天音が俺と親密な関係だと嘘を言って、別れるように言ったのではないかと察知がついた。

 本当に天音はなにも変わっていないんだな。いや、帰国早々に野々花に会いに来て牽制したのならば、昔より悪化していると思う。

「悪かった、事前に天音のことを説明しなくて」

「いいえ、そんなっ……! 私なら大丈夫です。……だから契約途中ですが、離婚したいなら遠慮なく言ってください」
 やっぱり野々花は俺と離婚したいと思っている? いや、さっきの話だと俺が離婚したがっている感じがする。

「もしかして天音に別れろって言われた?」

 すると野々花の肩がビクッと震えた。

「言われたんだな」

 野々花に会いに来た理由はそれ以外考えられなかったけれど、俺はもう結婚しているにもかかわらずそんなことを言うなんて……。
< 169 / 255 >

この作品をシェア

pagetop