3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 頭が痛くなり、深いため息が零れた。

「あの、さっきも言いましたけど離婚したいなら遠慮なく言ってください。……私と違って渡部さんは理人さんのご両親にも好かれているようですし、なにより同じ医者です。おじい様を安心させるなら、私なんかより渡部さんが最適だと思います」

 やっぱり野々花は俺のことをなんとも思っていないことがつらく、野々花には〝私なんか〟という言葉を絶対に使ってほしくない。野々花以上に素晴らしい女性がどこにいる? 自分のことを過小評価し過ぎだ。
 それを笑顔で言う野々花に、悲しみと怒りが同時に込み上がる。

「天音とは幼なじみという関係でしかないし、俺は野々花と離婚したいなんて思っていない」

「えっ? でも……」

「それに自分のことを〝なんか〟なんて言うな。俺は野々花以上に結婚相手に相応しい女性はいないと思っているんだから」

 今の素直な気持ちを伝えると、野々花は戸惑い出した。

「天音は昔からあぁなんだ。俺に執着している。野々花がされたように、少しでも俺としゃべった女性に対して牽制していた」

「そんな……」

 野々花は信じられないと言いたそうに言葉を失う。
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