3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 一見天音は、美人で博識ある医者だ。だけど、本当の彼女の姿は違う。

「野々花に天音を近づけさせないようにするが、万が一彼女から接触してきた時は相手にせずに逃げてほしい」

 天音はなにをするかわからない。昔のように、俺が話した女性に対して牽制するだけならいいけれど……。

「それと天音の話はなにも信じないでくれ」

 俺は天音との結婚など望んでいない。なにがあっても天音を好きになることはあり得ないさ。

「これからも俺と結婚生活を続けてほしい。……祖父のためにも」

 祖父のためでもあるし、なにより俺が野々花と一緒にいたいんだ。
 その思いで伝えたものの、彼女はなにか考え込んでいて答えてくれない。

 野々花は今、なにを思っている? どうして首を縦に振ってくれないんだ? 結婚生活は三年間の約束だったはず。天音のことだってちゃんと説明したのに、答えてくれない理由はもしかして……。

「離婚したいと思っているのは、野々花のほうなのか?」

「えっ……?」
< 171 / 255 >

この作品をシェア

pagetop