３年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない

「嘘、もう朝……？」

　昨夜はなかなか寝付けなくて、寝たのがほんの一時間ほど前だった。眠いはずなのに、瞼を閉じても眠ることができない。どうしても鈴木君のことばかり考えてしまう。

仕方がなく起きて廊下に出ると、キッチンから美味しそうな匂いが漂ってきた。その匂いにつられていくと、キッチンで祖母が料理を作っていた。

「あら、おはよう野々花。早いわね」

「うん、目が覚めちゃって。手伝うよ」

「そう？　ありがとう」

　袖を捲って手を洗い、祖母に代わって茹でたほうれん草を切る。

「それで昨夜は抜け殻状態で帰ってきたからなにも聞けなかったけど、理人君と喧嘩でもしたの？」

「えっ!?　な、なんで!?」

　つい大きな声を出してしまうと、祖母はクスリと笑いながら味噌をとく。

「結婚して急に実家に帰ってくる理由はそれしかないでしょ。夫婦といっても他人同士だもの、喧嘩をすることで仲が深まっていくと思うの。だけど必ず仲直りしないとだめよ。恥ずかしがらずに素直になることが一番よ」

「……おばあちゃんもそうだったの？」

　あまりに自信満々に言うものだから聞いてみると、祖母はすぐに「えぇ」と答えた。