3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 ふと想像するも、そうしたらきっと鈴木君は私に告白することもなかっただろうし、私は鈴木君の気持ちにずっと気づかないままだったと思う。

 奈津希と鈴木君に理人さんとの本当の関係を打ち明けることもなかったし、私はひとりで今も渡部さんのことで思い悩んでいたかもしれない。

 そう思うと、人生において正しい選択肢なんてないのかもしれないと思ってしまう。でもその時の選択が人生を大きく変えることになるとも痛感する。

「ねぇ、おばあちゃん……」

「ん? どうしたの?」

 味噌汁の味見をする祖母に、手にしていた包丁をそっと置いて聞いた。

「私と理人さんは、おばあちゃんの目にはちゃんと夫婦に見えてる?」

 私たちは契約結婚した仲であって、そこに愛はなかった。でも今は違う。私は理人さんのことが好きだから祖母の目にはどう映っているのか知りたくなってしまった。

 すると祖母は「ふふっ」と笑った。

「なにを思い詰めた顔で聞いてくるのかと思ったら……。当然でしょ? あなたたちは夫婦にしか見えないわよ。それをこの前しみじみと思ったわ。……私が施設に入りたいって言ってきっとののちゃんを驚かせちゃったでしょ? そんなののちゃんをフォローするように理人君が取り持ってくれたのを見て、素敵な夫婦だと思ったわ」

「おばあちゃん……」
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