3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「ごめん、遅くなって」

「ううん、お仕事お疲れ様」

「それを言ったら泉もお疲れ様」

 よかった、いつも通りに話せている。

 ホッと胸を撫で下ろしたところで、注文を取りにきた店員に鈴木君は珈琲を頼んだ。
だけど珈琲が運ばれてくるまでの間、どっちも口を閉ざしたまま沈黙の時が流れる。

 少しして珈琲が運ばれてきて、さっそく鈴木君は一口飲む。そして私を見据えた。

「それで泉、話って?」

 先に切り出したのは鈴木君だった。

「あ……うん」

 一気に緊張が高まって喉の渇きを覚え、カフェオレを半分以上飲み干す。

「鈴木君に昨日の返事をしたいの」

 バクバクとうるさい心臓を必死に沈めて、静かに私が話しだすのを待つ鈴木君を見つめ返す。

「鈴木君に想われていたことに気づけなくてごめんね」

「いや、気づけなくて当然だよ。俺も必死に隠してきたから。むしろ気づかれていたほうが恥ずかしいから」

 笑顔でフォローしてくれた鈴木君の優しさに泣きそうになる。

「泉には悪いけど泉に打ち明けてすっきりしているのに、泉のことがまだ好きでさ。だから少しずつ好きじゃなくなれるように、今ちゃんと振ってほしい」

 彼の言葉に自分を奮い立たせ、私は大きく頭を下げた。

「好きになってくれてありがとう。でも私が好きなのは理人さんなの。だから鈴木君の気持ちに応えることはできない」
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