3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 もしかしたらもう二度と戻ってこないかもしれないと不安だったから。
 涙を拭い、さっそく彼に返信をした。

【わかりました。今日は難しいオペがあると聞きました。成功を願っています。頑張ってください。今夜は理人さんが好きなものを作って待っています】

「よし、行こう」

 いつも以上に気合いを入れて準備に取りかかった。朝食後、身支度を整えて家を出る。歩いて向かう途中、信号が赤に変わって先頭で足を止めた時にスマホを確認すると理人さんから返信が届いていた。

【ありがとう。最善を尽くしてくる。それと俺の好物を作ってくれると知って家に帰るのが楽しみになったよ】

 何度も見ては顔がニヤけそうになる。

【楽しみにしててくださいね】と返して、スマホをバッグにしまった。

 なかなか信号は変わらず、交差点には多くの車が行き交っている。通勤ラッシュの時間だからか、みんな必要以上に飛ばしてもいた。

 通り過ぎていく車を眺めながら、家に帰ったらなんの料理から作ろうかと考える。

 ハンバーグは最後に焼くべきだよね。そうなると最初に作ったほうがいいのは……と頭の中でシミュレーションしていた時。

「お願いだから消えて」

「えっ」

 次の瞬間、思いっきり背中を押されて道路に倒れ込んでしまった。すぐにけたたましく鳴り響くクラクションと周囲から聞こえる悲鳴。そして目の前に迫る車。

 一瞬の出来事がまるでスローモーションのように目に映る中、強い衝撃が身体を襲った後、私は意識を手放した。
< 218 / 255 >

この作品をシェア

pagetop