3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 さすがにこれほど噂が広まっているんだ、父の耳にも入っているはず。

「本当にすまないな。これ以上みんなに迷惑をかけないようにするから」

 天音のことをすべて片づけてから野々花と話をしよう。
 医局に戻り、入院患者の処方箋を作成しているとスマホが鳴った。相手は父で目を疑う。

 勤務中に内線で呼び出されることは何度もあったが、プライベートのスマホに電話をかけてくることは滅多にない。
 できるなら出たくないが、そうもいかないな。
 ため息をひとつ漏らして電話に出ると、大切な話があるから家に来てほしいというものだった。

 宿直の同僚に外出してくることを伝えて、久しぶりに実家へと向かった。


 到着すると家政婦に案内され、両親が待つというリビングに案内された。ドアを開けると、ソファに座っていたふたりはともに立ち上がる。

「悪いな、大事なオペの前日に呼び出して」

「そう思っている上で呼び出すということは、よほど重要な話なんですよね?」

 つい嫌味を言ってしまったものの、父は言い返すことなく「あぁ」と力ない声で言った。

 母も母で、神妙な面持ちで腰を下ろす。ただならぬ様子のふたりに、緊張が増していく。

「なに? なにかあった?」

 てっきりまた野々花と別れて、天音と再婚をしろと言われると思っていた俺は拍子抜けしてしまう。
 すると少しの沈黙の後、父が切り出した。
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