3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 天音と結婚することで病院に利益が生じるから、俺に結婚を強要しているとばかり思っていたが、少しは俺の幸せを本気で考えてくれていたと思ってもいいのだろうか。

「これ以上、天音ちゃんとの結婚を進めることは止めると約束しよう。天音ちゃんの今後についても、医院長として現場の意見を聞いて然るべき対応をとる」

「そうしてくれると助かるよ。同僚からも苦情がきていたんだ。それに噂も広がって困っている」

「あぁ、わかってる。……すまなかった」

 深々と頭を下げて謝罪する父の姿に、どう反応したらいいのか困ってしまう。だけど父は誠実に対応してくれた。それに天音のことも理解してくれて本当によかった。

「いや、こっちこそありがとう」

 初めて俺もお礼を言うと、顔を上げた父は目を見開いた。

「これは驚いた。まさか理人から感謝される日がくるとは」

「俺だってありがとうくらい言うさ」

「ふっ」と笑う父に照れ臭さを感じてしまう。

「外科部長からお前が医者としても人間としても成長できたのは、明らかに結婚してからだと聞いたよ。理人のためにも病院のためにも結婚相手に相応しいのは、お前が選んだ相手なのだろう」
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