3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「え? それじゃ……」

 俺の言葉を遮り、父は大きく頷いて「野々花さんと温かな家庭を築いていきなさい」と言ってくれた。
 父が野々花のことを認めてくれたと思うと、嬉しくてたまらない。

「あぁ、もちろんだ」

 これで心置きなく野々花に想いを伝えることができる。でも認めてくれたのは父だけだ。父より野々花との結婚を快く思っていなかった母は、どう思っているのだろうか。

 ずっと沈黙を貫いていた母を見ると目が合う。すると母は真剣な面持ちで口を開いた。

「理人、あなたにとっての幸せは野々花さんと一緒に人生を歩むことなの?」

 意外な母からの質問に、言葉を失う。だけどどこか苦し気な表情で俺の答えを待つ母に正直な気持ちを伝えた。

「野々花とはまだ出会って間もないし、お互い知らないことも多いと思う。だけど俺の人生に野々花がいない毎日が考えられないほど、大切な存在なんだ」

 彼女が家を出て痛感した。野々花のいない家は家じゃない。野々花がいてこその俺の帰る場所なのだと。

「野々花と生きていくことが、俺の幸せだと胸を張って言えるよ」

 もっと野々花のことを知り、俺のことも知ってほしい。もしかしたら意見が食い違い、喧嘩することがあるかもしれない。

 その時はとことんお互いの意見をぶつけ合って、さらに仲を深めていけたらと思う。

 この前の出来事もいつか笑い話になるように、嫉妬したことを認めて謝り、そして好きだと伝えたい。

「そう……そうなのね」

 俺の答えを聞き、母はまるで自分に言い聞かせるように呟く。
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