3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「もしこの先、野々花さんの気持ちが理人から離れたとしても同じことが言える?」

 母に聞かれ、ふと鈴木のことが頭をよぎる。

 どう見ても鈴木は野々花に好意を寄せていると思う。だけど俺は野々花を鈴木はもちろん、他の誰にも渡したくない。

「離れたらまた引き戻せばいい。野々花への想いは、簡単に諦められるものじゃないから」

 嘘をつきたくなくて言ったものの、俺の話を聞いた両親が気まずそうに目を逸らしたのを見て、言った後から恥ずかしいことを言ったと自覚する。

「と、とにかくそういうわけだから」

「理人の気持ちはわかったわ。……悪かったわね。昔、あなたの主張を信じずにつらい思いをさせて。あの時、理人の言葉を信じていれば、あなたも天音ちゃんも違った未来があったのかもしれないと思うと、後悔してしまうわ」

「母さん……」

 あれほど天音との結婚に強くこだわっていた母の豹変ぶりに、夢でも見ているのかと思うほど動揺してしまう。
 そんなことを考えていることを察したのか、母は不服そうに俺を見た。

「なに? その顔は。言っておくけど私だって謝る時は謝るわよ。……これまではいい母親ではなかったかもしれないけど、息子の幸せは常に願っていたから」

 なにが母をここまで変えたのだろうか。やっぱりこんな母は慣れなくて戸惑うよ。
 すると俺たちのやり取りを見ていた父が、クスリと笑った。
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