3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「おはよう」

 野々花との一件以来、挨拶を交わすことはあってもそれ以上の関りはなかった。それなのになぜか鈴木は今、俺の後をついてくる。

 もしかして野々花からなにか聞いたのだろうか。それとも俺に宣戦布告をしようとしている?

 様々な考えが及び、ついチラチラと鈴木を見てしまう。それに気づいた彼は笑いだした。

「すみません、あまりに高清水先生が俺を見るものですから。安心してください、泉にはしっかりと振られましたから」

「えっ?」

 思いがけない話に足が止まる。すると鈴木も足を止めて俺に歩み寄った。

「俺のことは、友達以上には思えないとハッキリ言われちゃいましたよ。だけど振ってくれたおかげで俺も前に進めそうです。……俺の幸せのためにも、高清水先生と泉は絶対に幸せになってください」

「鈴木……」

 そう話す鈴木の顔は笑っているが、声は少し震えていた。どれくらいの期間、鈴木は野々花を想っていたのだろうか。

「今日のオペ、俺も助手として入らせていただきますので、よろしくお願いします」

「あ、あぁ」

 鈴木は最後まで笑顔で俺に一礼し、颯爽と去っていく。その後ろ姿は眩しくて俺も負けていられないと思った。

 嫉妬して落ち込んでいる場合じゃなかったな。俺も鈴木のように勇気を出して野々花に想いを伝えなくてはいけない。
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