３年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない

『新条件 生涯寄り添うこと』

　最後に見た景色はけたたましいクラクションの音と、人々の悲鳴、そして目の前に迫りくる車だった。


「んっ……」

　全身に感じる痛みで目が覚めたものの、なかなか瞼を開けることも、身体を動かすこともできない。鼻を掠めるのは消毒液の匂い。

「野々花……？　大丈夫か？　野々花」

　そして聞こえてきたのは心配そうに私を呼ぶ理人さんの声。

「理人……さ、ん？」

「あぁ、そうだよ」

　手を強く握られ、その相手を確認したくて必死に目を開ける。すると視界いっぱいに理人さんの顔が広がった。

「理人さん……」

「よかった、目が覚めて。気分はどうだ？」

「気分……」

　自分の身に起きたことが理解できなくて固まる。でも最後に見た景色を思い出し、事故に遭ったんだって理解できた。

「私、助かったんですね」

「もちろんだ。重傷を負ったが、無事に手術も終わったし後遺症も残らないだろう。ただ、これからしばらくは絶対安静だし、リハビリも待っているがな」

　そっか、よかった。またこうして理人さんと会うことができて。