3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 それはすべて私のせいだと思い込み、私がいなくなれば理人さんと結婚できると考えて犯行に及んだという。
 きっと理人さんはもちろん、お義父さんとお義母さんもショックを受けただろう。

「俺のせいでこんな大けがをさせてしまい、本当に悪かった」

「いいえ、理人さんのせいではありません」

 すべて渡部さんが起こした結果だ。だから責任など感じてほしくないのに、理人さんの表情は晴れないまま。

「俺がもっと早くに天音のことを対処していれば、こんなことにはならかった」

「でも私を助けてくれたのは理人さんだって聞きました。それに渡部さんは逮捕されたんですよね?」

「あぁ、当然だ。二度と俺たちの前に現れないように、弁護士を通して約束させるつもりだ」

 渡部さんと言葉を交わしたのは、彼女の帰国直後の一回だけだった。あの時だけで渡部さんがどれほど理人さんのことを好きなのか伝わってきた。

 だけど彼女の想いは間違ったものだ。好きならなにをしてもいいわけじゃない。そして誰の想いも報われるわけでもない。
 渡部さんがしたことを考えると許すことはできないけれど、報われない想いもあることを理解して、自分のしたことを反省してほしい。

「だったらもう安心です。私、ひとりでも眠れますよ?」

 ここにはベッドはひとつしかないし、理人さんはあのソファで寝るってことでしょ? いくら特別室のソファだといっても、彼にとったら小さいし身体が痛くなるはず。

「いや、野々花が退院するまでここで寝るよ。……俺、野々花がいない家には帰りたくないんだ」
< 237 / 255 >

この作品をシェア

pagetop