3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「俺が結婚するって聞いてから、まるで病気が治ったように元気に過ごしているってお手伝いさんやヘルパーさんから聞いて耳を疑ったけど、どうやら本当にようだ。……ここ最近はずっとベッドに臥せっていたんだ。今の祖父からは想像もつかないだろ?」

「はい。でもそれだけ理人さんがおじいさまにとって、特別な存在だってことですよね」

「そうなのかもしれないな」

 そう話す理人さんはどこか複雑そう。でも今の彼の心情は痛いほど理解できてしまう。私も喜ぶ祖母を見てずっと胸を痛めていたから。

「座って待ってておくれ。今、ばあさんが好きだったとっておきのお茶を淹れてやろう」

「手伝うよ。野々花は座って待ってて」

「わかりました」

 祖父に寄り添って理人さんはキッチンへと向かう。ふたりの後ろ姿を見送ってから通された茶の間に目を向けた。

 そこには彼の祖母が作ったものだろうか、手作りの刺繍の飾りや人形などが飾られていた。その横には祖父と祖母が写る写真もあった。
 この部屋を見ただけで祖父が、どれほど祖母を愛していたのかが伝わってきて胸が熱くなる。

 少しして戻ってきた祖父に、渡せずにいた手土産を渡すと、感激してまた泣きだしてしまった。
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