3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「まさか孫嫁に好物のきんつばをもらえる日がくるとは……! ばあさんにも分けてやらないとな」

 ここまで喜ばれると、罪悪感に悩まされる。

「私が用意したどら焼きもなかなかうまいんじゃ、お茶ともよく合うじゃろう。ぜひ食べてみてくだされ」

「ありがとうございます」

 理人さんと並んで座り、祖父は私たちの向かい側に腰を下ろした。

「それにしても野々花さんがうちの病院で働いており、知り合ったきっかけが患者さんからの言付けだったと聞いた時は、血は争えんと思ったよ」

 感慨深そうに話す祖父の言う通り、私たちは契約結婚をするにあたって様々な条件の他に、ふたりの出会いや結婚に至るまでの経緯を事細かに話し合った。

 契約結婚を持ちかけた席で私が伝えた患者の話を出会いのきっかけにし、そこから話す機会が増えて交際に至ったことにしてある。

「私は医者、ばあさんは看護師じゃった。同じ病院で働いているからこそ、互いに理解できることもあった。……理人と野々花さんも私たちのように支え合う関係を築いていってほしいと思うよ」

 お茶を飲んだ祖父は、満面の笑みで私と理人さんを見つめる。
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