3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 顔が引きつる私を乗せて彼が向かった先は、都内でも有名な高級住宅街。その中でもとくに目立つ三階建ての洋館が理人さんの実家のようだ。

「お待ちしておりました。どうぞ」

 私と理人さんを出迎えてくれたのは五十代くらいの女性の家政婦だった。だけど見るからに歓迎されていない様子で、笑顔もなくリビングに案内された。

「旦那様、奥様。いらっしゃいました」

 私たちを案内すると家政婦はキッチンへと向かう。そして彼の両親はソファから立ち上がることもなく私を見た。

 彼の父は病院で見たまんまの厳しい症状をしていて、母はというと品定めするように私を上から下まで見る。
 やはりこれは完全に反対される雰囲気だよね。

「来たか」

「どうぞこちらへ」

 ふたりに言われ、身体中に一気に緊張がはしる。すると理人さんがそっと私の腰に腕を回した。
 びっくりして彼を見れば、目が合った途端に優しく微笑む。

「緊張しなくてもいい、大丈夫だから」

 私を安心させる言葉とともに背中を撫でられては、今度は違った意味で緊張してしまう。突然甘い雰囲気を出されても、どう反応したらいいのやら。
< 33 / 255 >

この作品をシェア

pagetop