3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
 それに中学生の時に両親を交通事故で亡くしてからというもの、ひとりで私を大切に育ててくれた祖母にはなんて言う?

 この前、結婚を考えている人を紹介したいと電話で伝えた時には泣いて喜んでいたじゃない。優しい祖母のことだ、自分のことのように悲しむに決まっている。
 その時の祖母を想像すると胸が張り裂けそう。

 黙々と食べ進め、最後にデザートと珈琲が運ばれてきた。芳しい珈琲の香りが鼻を掠める中、隣の席のカップルの会話が耳に届いた。

「交際を始めて三カ月が過ぎたし、そろそろキミとの結婚を考えているのだが、どうだろうか」

「えっ? 本当ですか?」

 結婚というワードの過敏になっている私は思わず反応してしまう。

 私から見て男性は背を向けているからどんな人なのかわからないけれど、さっきの切り出し方はいかがなものだろうか。

 それも三カ月付き合っただけで結婚? なに? その超スピード婚は。あぁ、でも愛し合っていれば交際期間など関係ないんだろうな。現に私が六年も付き合って結婚まで至らなかったのだから。

 それに結婚の話をされて女性はすごく嬉しそうな顔をしている。
 いったいどんな素敵なプロポーズの言葉をこの男性は女性に言うのだろうか。
< 4 / 255 >

この作品をシェア

pagetop