３年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「あ、時間……！」

　考え事をしていたらだいぶ時間が経っていたことに気づき、急いで残りの洗濯物を畳み、出勤する準備に取りかかった。


「ねぇ、野々花と高清水先生の不仲説をさっき聞いたんだけど大丈夫なの？」

「……えっ？」

　午前中の勤務を終え、食堂に移動して朝作ったお弁当を食べていると、少し遅れて休憩に入った奈津希がやって来た。
　その彼女が来るや否や、声を潜めて聞いてきたことに驚き固まる。

「私だって更衣室で先輩たちに聞かれた時は耳を疑ったよ？　結婚式のふたりは本当に幸せそうだったし、そんなこと絶対にあり得ないとわかってはいるけど心配で……」

　その気持ちは奈津希の表情を見れば、痛いほど伝わってくる。
　だけどまさかそんな噂が広まっていたなんて……。どうしてだろう、職場では顔を合わせたらちゃんと話をしているのに。

「ねぇ、先輩たちはどうして私と理人さんが不仲だって思ったんだろう」

　不思議に思いながら聞いたものの、「それは……」と言って奈津希は言葉を濁した。

　そして彼女が視線を下げた時、「それは新婚なのに、高清水先生が家に帰っていないからだよ」と言いながら、鈴木君が私の隣に腰を下ろした。

「普通、新婚となればどんなに短い時間でも家に帰るものなのに、高清水先生は連日仮眠室で過ごし、家に帰っても二時間もせずに戻ってくるとなれば、そんな噂が流れても仕方がないんじゃないか？」

　鈴木君は淡々とした口調で言いながら、そばを啜る。
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