3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「大丈夫、話しならちゃんと聞くから。野々花が食べている間にシャワー済ませてくるよ」

 私を安心させる優しい声色に、たまらず腕を掴む手の力が強まる。

「あのっ……! もし理人さんさえよければ、食べてくれませんか?」

「えっ?」

「遅い時間ですし、重いメニューじゃなくてうどんを作ったんです。ひとりじゃ食べきれない量を作っちゃいましたし、迷惑じゃなければ……」

 なんで私、こんなにテンパっちゃっているんだろう。普通に理人さんのために作ったって言えばいいのに、それがなぜか恥ずかしくて言えない。
 次第に理人さんの顔を見ることができなくなり、ゆっくりと視線が下がる。すると彼はクスリと笑った。

「ちょうど小腹が空いていたんだ。俺も食べていいなら食べさせてほしい」

「もちろんです! 待っててください、すぐに準備しますね」

「あぁ。じゃあ俺は着替えてくる」

 急いでキッチンに戻り、スープの味見をする。満足のいく味になっていることを確認し、器にふたり分盛り付けてテーブルへと運んだ。

 着替えを終えた理人さんが飲み物とお箸を用意してくれて、初めて食卓に向かい合って座る。

「いただきます」

「はい、いただきます」
< 76 / 255 >

この作品をシェア

pagetop