3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
『私は元気よ。今日も町内会のみんなと公民館で映画鑑賞会をしてきたの』

 楽しそうに話す祖母の声に、自然と頬が緩む。

「そうなんだ、楽しかった?」

『えぇ、みんなで大笑いしちゃったわ』

 どうやら見たのはコメディ映画のようだ。その後も他愛ない話で盛り上がる。

『落ち着いたらいつでも帰ってきていいからね。理人君も大歓迎よ』

「うん、ありがとう。近いうちに帰るね」

 これまでは最低でも月に一度は祖母の様子を見に家に帰っていた。それは結婚後も続けていかないと。
 祖母はひとりでも平気だと言い張るけれど、今年で八十三歳になる。歳を重ねるごとに心配も尽きない。

『楽しみにしているわ。その時は連絡をちょうだいね』

「わかったよ。またね」

 通話が切れた画面を見ると、通話時間はたったの十分だった。前は平気で一時間は電話で話していたのに。きっと祖母は気遣ってくれたのだろう。今度の休みにでも帰って祖母の様子を見てこよう。

「あ、ご飯……!」

 あと五分で十九時になってしまう。急いでキッチンに入って調理に取りかかる。今日はあまりに時間がないし、簡単に親子丼にしよう。

 冷蔵庫から材料を取り出したところで、玄関のドアが開く音がした。
< 92 / 255 >

この作品をシェア

pagetop