3年後離婚するはずが、敏腕ドクターの切愛には抗えない
「嘘、もう帰ってきちゃったの?」

 急いで作ろうとした時、廊下に続くドアが開いた。

「ただいま」

「おかえりなさい。すみません、今からご飯の用意をするので少し待っててくれませんか?」

 彼に言いながら鶏肉のパックを開けるより先に理人さんが「待った」と言った。

「それなら、たまには外食しよう」

「外食ですか?」

「あぁ、いつも作ってもらっていて大変だろ?」

 全然負担には思っていないんだけどな。でもせっかくの彼の好意だ。ここは甘えてもいいかな? それに理人さんだってたまには外で食べたいのかもしれないし。

「わかりました」

 出した材料を冷蔵庫にしまい、キッチンから出る。

「よし、じゃあ行こうか」

「はい」

 そういえば結婚してからはふたりで外食するのは初めてだ。いったいどこに連れていってくれるんだろう。

「車で三十分くらいかかるところなんだけど、疲れていない?」

「私は平気ですけど、理人さんこそ大丈夫ですか?」

 私は免許を持っていないから彼に運転してもらうことになってしまう。

「俺も大丈夫。じゃあそこに行こう」

 家を出て地下の駐車場に向かう途中、彼は行き先に電話で予約を取ってくれた。そして彼の運転で向かった先は完全個室の日本料亭。
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